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ナイル2017年12月号掲載歌【火と水の】 [ナイル短歌工房]

攫はれるやうにたまゆら目の端をなでては過ぐる黄金さざなみ

水の香のはつか匂へるゆびさきを手繰りよせれば水の花咲く

暗室にゆくりなく射す一条のひかりのしづく闇まひるまの

まどろみは遠いとほくへ耳もとに寄せてはかへすはつあきの風

つついてもこはれぬきみの円環はふはりと浮かぶ雲を抱きこむ

木犀に肩を押されて坂道はふたたび逢はぬ香のふきだまり

火と水のまじはるところうつそみの人にはあらで経るみそかごと

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ナイル2017年11月号掲載歌【卍】 [ナイル短歌工房]

卍とも七ともつかぬ十字はや若きらの描くあいまいな過去

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忘れたいのは嘘でせうピレネーの天使の眼(まな)に色なき風は

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一滴のインクのにじみ色褪する「死ぬときはたれもひとり(イェーダー・シュティルプト・フュア・ズィッヒ・アライン)」

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この国のすぎゆきのいま松明の真闇にひづむボシュの顔かほ

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信仰とおぼしきものの涯のはて寄せてはかへす死者たちのこゑ

八十年のたたかひを経てなほつづく「星(シュターン)」といふ名のしめすもの


NNM Trailer from Charlene Stern on Vimeo.


銃(つつ)の上(へ)に花咲かせたるヒト型のアンドロイドの不器用な手は

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言ひつのり退路をなくすしろたへの仮面のうらに視るスワスティカ

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A Popular Japanese Cosmetic Surgeon Is Called Out for Admiring Nazism

貴(あて)ならばあまた負ふもの水晶のかがみのうへに影はうごめく

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麻生副総理「ヒトラー、いくら動機正しくてもダメ」:朝日新聞デジタル

ghetto(ゲットー)とこだまの呼ばふ日ざかりはエノコログサの揺れる空き地に


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現代語や、簡易語のこと [ナイル短歌工房]

かなり前に、NHK短歌で
「中待合」ということばが取り上げられました。

いわゆる新語として、共通理解があるかどうかという。

この場合は、ぎりぎりセーフとの判断でした。

結社の歌会でも「終活」が話題になったことがあります。

言われてみれば分からなかったので調べました。
「終焉活動」かな。

共通理解の域に達しているか、一部の人の理解に留まるのか、
いろいろあります。

今月の詠草は「オリパラ(オリンピック・パラリンピック)」、
「簡宿(簡易宿泊所)」という略語をあえて使いました。

31文字という制約もさりながら、
現行の問題について、
調べてでも略語を知ってもらいたかったからでもあります。

ナイルは詠みぶりについて制約のない一方、
新語についての判断は厳しいので
私の選択がどう評価されるかは分かりません。
評価に従って、自分の判断を変えるつもりはありませんが。
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ナイル2017年10月号掲載歌【カジノ】 [ナイル短歌工房]

くろふねはノースドックの身代はりを担うてきたり山下埠頭

オリパラにことよする手はつけられて波止場食堂やをうつりけり

陽ざかりをコトブキへゆく賭けごとの染みたる街にそを聞きにゆく

簡宿を見上げて問へば手を横に振るひとのありさうか要らぬか

上ぐるこゑなきにあらざり次々と手に取られゆくみどりのシール

「これからの人には要らぬ」ぎりぎりの生計(たつき)をなさむ老いのひとこと

電光板に数字するどく暗がりにひたすら黙すやみの群むら

ともがらは曰はく「博打のカミサマ」よカジノカジノとはしやぐ男の

昼なかを地べた座りの人ひとの空にづぬけたひまはりは揺る

Roulette, win or lose すぎゆきは海馬にゆれるハスキーヴォイス

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十首目の「ルーレット」は全曲が聴けないので、試聴できるリンクを貼ります。
Amazon.co.jp: ルーレット: 上田 正樹: デジタルミュージック
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ナイル2017年9月号掲載歌【片輪むすび】 [ナイル短歌工房]

タクシーの窓にひろがる海の面に逆さネオンのひづみのかたち

おぼつかな陸と海との逢ふところガラスに映るみかづきのかほ

妄執を飼ひならしつつヨコハマの夜をとぶらふ汽笛を聞きぬ

飲みさしのビールの缶をそのままに浅きねむりのひと夜かなしき

しつとりとたまごの匂ふトーストに蜜を添へてはみなつきのあさ

行き止まりの白壁のありあまごもりつゆのひぬまの影をうつして

あすはなき七角形の部屋にゐてひと日をあそぶかたなわむすび

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ナイル2017年8月号掲載歌【黙はよこたふ】 [ナイル短歌工房]

たまさかるあの世この世をはしわたす結界として水はありにき

橋ひとつ渡ればしばしぬばたまの夜のそこひに黙はよこたふ

ささいなるいとぐちならむ道行きの手を漏るみづの糸のあやなす

共謀はあてどを知らずあしのねの我がためならぬ罪とはなにか

用ふべき手駒のなくて歩ばかりの陣をせばむるほのほの輪舞

逃げまどふおかまのあはれいつの世も受け入れられぬひとであつたよ

謀りごとたがひちがひに綯ひあはせ快楽(けらく)となさむひとよの花火

かがみなす浄夜あければももとせを待たずしをるる手向けの花は


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ナイル2017年7月号掲載歌【偏在の不在】 [ナイル短歌工房]

かほだちのあやめ分かたぬ狛犬はまさをのそらの結界にたつ

陰をなすかげをしたがへむらさきの苞をもたげるくちなはの徒(あだ)

あまあしの遠いまひるまカサンドラリリーは種をむすばぬさだめ

偏在のすみれはひらき大いなる不在をかこつ天球儀あり

はなぐはし桜ふぶきはうつせみのひとよをめぐる終はりのはじめ

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ナイル2017年6月号掲載歌【フラワー&ガーデンショウ】 [ナイル短歌工房]

すべからく朝な夕なをしひられて揃へばひらく薔薇(うばら)はありぬ

大輪はかなしかるべしをみなごの白きはだへはものおもふ薔薇

咲き出でて三日にしをるるさだめなれかよはぬ恋の薔薇のむらさき

あらざらむ黄色のさうびわうごんのひかりにまどふまなこふたがれ

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手前が「オスカル・フランソワ」奥が「フェルゼン伯爵」。
会場にはなかったが「アンドレ・グランディエ」は黄色のバラ。

くさぐさのをみなの額(ぬか)をわたりゆくとるこききやうの花冠は

ヨコハマは去年(こぞ)うまれたるペチュニアにこのあかときとゆふぐれがある

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左:ヨコハマ・モーニンググロウ 右:ヨコハマ・トワイライト

ひといきれ花のかをりを逃れいでうすき日差しの春はヨコハマ

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ナイル2017年5月号掲載歌【夢の質量】 [ナイル短歌工房]

ついたちの桜並木のぼつてりとけふありがちなをんなのなまへ

ゆふぐれはベッドのへりにあたたかくただのあなたのものとはなりぬ

灰いろのしじまの淵にただよひつ覚めてはねむる いつのまに雨

さやうなら光の逃げたフラスコの底にたゆたふ夢の質量

かざぐるま回るまはらぬさてもこそみなとみらいに午後の陽のかげ

園生より離れて咲きたるぬばたまの黒きダリアの目に亜空間

ペルソナ・ノン・グラータといふ 花さうびねぢれのいろのあざとさつたら


ナイル2017年4月号掲載歌【珈琲日和】 [ナイル短歌工房]

雨だれのときを上島珈琲はふと沈黙のまなざしのこと

豆を選るその指先のとまどひは火ともし頃の雨に似たりき

珈琲の肌にながれるうばたまの夢のあはひにしづむランバダ

ひとりゐる朝の目覚めはしろたへのカップのふちの空白のあり

あいまいにほどける夜の輪郭のよみがへりつつカフェ・マキアート

イッタラのカップのあをはてのひらに溶けてただよふゆふぐれの海

ぬるびゆく缶コーヒーをそのままにひと夜を展くつづきの話

ぬばたまの息ふるゆきのコトノハはまるい鏡のうちに溶けあふ



*2月に参加したネットプリント「珈琲日和6」に少し足して、連作にしました。
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