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ナイル2017年8月号掲載歌【黙はよこたふ】 [ナイル短歌工房]

たまさかるあの世この世をはしわたす結界として水はありにき

橋ひとつ渡ればしばしぬばたまの夜のそこひに黙はよこたふ

ささいなるいとぐちならむ道行きの手を漏るみづの糸のあやなす

共謀はあてどを知らずあしのねの我がためならぬ罪とはなにか

用ふべき手駒のなくて歩ばかりの陣をせばむるほのほの輪舞

逃げまどふおかまのあはれいつの世も受け入れられぬひとであつたよ

謀りごとたがひちがひに綯ひあはせ快楽(けらく)となさむひとよの花火

かがみなす浄夜あければももとせを待たずしをるる手向けの花は


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ナイル2017年7月号掲載歌【偏在の不在】 [ナイル短歌工房]

かほだちのあやめ分かたぬ狛犬はまさをのそらの結界にたつ

陰をなすかげをしたがへむらさきの苞をもたげるくちなはの徒(あだ)

あまあしの遠いまひるまカサンドラリリーは種をむすばぬさだめ

偏在のすみれはひらき大いなる不在をかこつ天球儀あり

はなぐはし桜ふぶきはうつせみのひとよをめぐる終はりのはじめ

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ナイル2017年6月号掲載歌【フラワー&ガーデンショウ】 [ナイル短歌工房]

すべからく朝な夕なをしひられて揃へばひらく薔薇(うばら)はありぬ

大輪はかなしかるべしをみなごの白きはだへはものおもふ薔薇

咲き出でて三日にしをるるさだめなれかよはぬ恋の薔薇のむらさき

あらざらむ黄色のさうびわうごんのひかりにまどふまなこふたがれ

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手前が「オスカル・フランソワ」奥が「フェルゼン伯爵」。
会場にはなかったが「アンドレ・グランディエ」は黄色のバラ。

くさぐさのをみなの額(ぬか)をわたりゆくとるこききやうの花冠は

ヨコハマは去年(こぞ)うまれたるペチュニアにこのあかときとゆふぐれがある

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左:ヨコハマ・モーニンググロウ 右:ヨコハマ・トワイライト

ひといきれ花のかをりを逃れいでうすき日差しの春はヨコハマ

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ナイル2017年5月号掲載歌【夢の質量】 [ナイル短歌工房]

ついたちの桜並木のぼつてりとけふありがちなをんなのなまへ

ゆふぐれはベッドのへりにあたたかくただのあなたのものとはなりぬ

灰いろのしじまの淵にただよひつ覚めてはねむる いつのまに雨

さやうなら光の逃げたフラスコの底にたゆたふ夢の質量

かざぐるま回るまはらぬさてもこそみなとみらいに午後の陽のかげ

園生より離れて咲きたるぬばたまの黒きダリアの目に亜空間

ペルソナ・ノン・グラータといふ 花さうびねぢれのいろのあざとさつたら


ナイル2017年4月号掲載歌【珈琲日和】 [ナイル短歌工房]

雨だれのときを上島珈琲はふと沈黙のまなざしのこと

豆を選るその指先のとまどひは火ともし頃の雨に似たりき

珈琲の肌にながれるうばたまの夢のあはひにしづむランバダ

ひとりゐる朝の目覚めはしろたへのカップのふちの空白のあり

あいまいにほどける夜の輪郭のよみがへりつつカフェ・マキアート

イッタラのカップのあをはてのひらに溶けてただよふゆふぐれの海

ぬるびゆく缶コーヒーをそのままにひと夜を展くつづきの話

ぬばたまの息ふるゆきのコトノハはまるい鏡のうちに溶けあふ



*2月に参加したネットプリント「珈琲日和6」に少し足して、連作にしました。

ナイル2017年3月号掲載歌【冬の休日】 [ナイル短歌工房]

その冬の休日のありふたつ名の虹のわたせる橋のたもとに

頬をよせまどろむ午後の水はあをくまつげに掬ふひかりのふるへ

ゆふづつは部屋のどこかにオレンジをふたつ転がすまちがひさがし

ひとごころともしき夜の灯のもとにことしの小さき咎をあがなふ

不在なるあしたのへりは天窓の吐息にそまる かげの鋭角

むらさきの色をとどむる沙羅双樹。常世の国にさをしかは跳ぬ

山門をくぐればひとりつゆしものじふぐわつざくら 風は死んでいたか

隠れ家に午後のしじまの深くして刻の襞なすきぬずれのこと

日だまりは水なき河を分かちつつげにえいえんのひとときをもつ

石だたみあしもとふかく砂のながれまさぐる海はとほいむらさき

ナイル2017年2月号掲載歌【水はひろがる】 [ナイル短歌工房]

ふかぶかと朽ち葉のしとね尖りゐるゆりの木ぬれに陽の宿りけり

色のなき更紗のへりは閉ざされてはつかに軋むベッドサイドに

息をかはす夜の深みゆきゆらゆらの足指の描くひらかなはふゆ

閉ざされた眸のさきにある霧はあをく薄らいでゆく夜の円環

肩口にむらさきの闇すんすんと眠らぬ真夜のサーキュレーター

朝ぼらけ目覚めのあひの黙ふかくうすくれなゐの水はひろがる

黄葉はさんざんと陽をかはしつつ身ぬちの熱を伏すたなごころ

なにとなく指をからめるしろかねの糸はつふゆの潮風に吹かれ

ものいはぬ目の閉ぢずありみなしたふ紅き尾びれは窓の辺に揺る

うつせみは空白の陽にうづくまるカロートに吹く風は風なの

ナイル2017年1月号掲載歌【薄紙を折る】 [ナイル短歌工房]

見かぎられ突つ立つてゐる あがなへばうつ向いて咲く カサブランカ

あかねさすまひるまの闇ふかくして深い吐息のいきのゆくへは

端をつかむ糸を手繰ればぬばたまのひとよの海の 迷宮(ラビリンス)

まひるまに交はす吐息かゆく秋の栞のはつか眼のふちにゐて

「海の味」「海の匂ひね?」問ひかへし繰りかへしつつ薄紙を折る

とつおいつさくらもみぢは貝のから寄せてはかへす海鳴りのこと

だまつて さらされたまま そらみつ こはれゆくいのち ときのくさび、いま

風を折る そのきつさきの鈍いろの海にしづもる真夜中のこと

ナイル2016年12月編集後記 [ナイル短歌工房]

 今年一番の出来事は何かと問われれば、参院選と沖縄と答えるだろう。短歌シンポでも危惧された統制への疑念から、複数の候補の演説に足を運び、環境保護に熱心な地元店舗で開催された選挙トークにも参加した。

 五月、沖縄うるま市での米軍属による殺害遺棄事件から、九五年に次ぐ大規模な基地反対集会。参院選翌日からの、高江のヘリパット工事。

 基地反対という民意で選ばれた議員は、翌日から現場へ急行せねばならなかった。これでよいのか。九月号の評論は、手元にあった本をもとに、そんな思いにかられて纏めた。

 大きな収穫は、短歌年鑑を頼りに、糸満市の紅短歌会と連絡を取ったこと。ナイル九月号をお送りし、「くれない」九月号を送っていただいた。日常詠と時事詠が切っても切れない状況があること、ある視点に否応なく放り込まれる方々が今もあることを思う。



原稿は改行無しだったのですが、紙面の都合上
他の欄に改行を加えて掲載されたので、誌面に準じました。

ナイル12月号掲載歌【夕なぎ】 [ナイル短歌工房]

降る雨はひかりの束にさえぎられけふみづくきの湖底まひるま

贄となる魚のあることさしむかふ身ぬちにかはす血のいろのこと

身をめぐる息のあをさよ繰りかへしくりかへす間をなみがしら立つ

ひとひらの皮膚の剥がれてマグノリア乾いた土のしとねに溶ける

さしかはすかひなはあをき水を欲りそのたまゆらをたゆたふリアス

生れぬ子はをんなであらう鉢に割るたまごの面にひとすぢの朱

うなだれる枯れ蓮の実を穿ちつつ月日をわたる蟲のいのちは

閉ざされたロスコルームにえいえんの刻ありぬべし呼吸ひとつの

ゆふがすみかひなのうちのつかのまの眠りの息の夕なぎのこと

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